国際建築住宅産業協会 SERIES INTERVIEW

WOODRISE 2021 BUSINESS SESSIONを語る

中高層木造建築物の
普及に向けて、
国内外の企業が一堂に集います。

JIBH 運営委員長能勢 秀樹

会長イメージ
2022年1月27日 取材

関心の高さを実感した
「WOODRISE 2021 KYOTO」
「WOODRISE 2021 KYOTO」は、2021年10月15日から17日にかけて、国立京都国際会館にて開催されました。コロナ禍での開催となりましたが、運営事務局や会場関係者の方々の尽力により、感染症対策を万全にして実施することができました。主な海外のスピーカーはオンラインでの参加になりましたが、最終的には、日本を含む18か国・約800名が参加し、実際に来場された方々は私たちの想像以上に多く、現地参加者は518人となりました。中高層木造建築物というテーマに世界中からたくさんの人々が関心を抱いていることを改めて実感しました。
特に私が嬉しかったのは、学生の参加が多かったことです。企業の内定者など建築に興味を持っている学生たちも来場してくれて、国際会議の雰囲気を味わってもらえました。この中から中高層木造建築物の発展を担う若い人が一人でも多く出てきてくれることを期待しています。
「WOODRISE 2021 BUSINESS SESSION」への展開
今回の「WOODRISE 2021 KYOTO」では、研究者や業界の第一人者たちが素晴らしいスピーチや各国の取り組みについて発表を行い、オンラインと現地参加のハイブリッド開催にすることで、全体会議や各種テクニカルワークショップを実施できました。会議はスムーズな進行ができ、活発な意見交換が行われ充実した内容となりました。一方で、感染症拡大防止の観点から、参加したみなさんの交流の場を提供できなかったことは残念でなりません。対面での商談や懇親の場で参加者同士が意見を交換することや現地の視察も、国際会議の重要な役割だと思います。産学官の人々が集う場にはビジネスチャンスが生まれるはずなのですが、その機会を作ることができず、海外からの参加者に京都の雰囲気を味わっていただくことも叶いませんでした。
そのような思いが、2022年5月22日から27日にかけて、東京にて開催する「WOODRISE 2021 BUSINESS SESSION」につながりました。京都で実現できなかったB to Bミーティングや社交行事、テクニカルツアーなどのイベントを実施し、国内外の中高層木造建築物に関わる参加者同士の交流を深めてもらうことを目的としています。各国の業界関係者が一堂に会する機会を活かして、商談ベースでの意見交換する場を提供したいと考えています。また、テクニカルツアーでは、研究所から神社仏閣まで、木造建築にまつわるさまざまな場所を視察する予定です。日本の文化に触れ、木造建築の技術を肌で感じてもらえるといいですね。
今、日本が果たす役割の大きさ
私は、2017年のフランス・ボルドーで開催された第1回から全ての「WOODRISE」に参加しています。当初は、参加している欧州や北米諸国が、日本よりも環境問題への関心が高く、気候変動への対策として環境負荷の少ない木材の利用、建築物の木造化に注力していることに驚きました。
その後、SDGsが浸透し、2021年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃に抑える目標に向かって努力することが合意されました。今後より一層、世界各国で脱炭素社会に向けての取組みが加速していくでしょう。
また日本では、同年10月に「公共建築物等木材利用促進法」の改正法が施行され、脱炭素社会の実現に向けて、同法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大されました。世界有数の森林国であり、昔から木の文化や木造建築を中心に生活してきた日本が、中高層木造建築物の分野で果たす役割は大きいと信じています。フランス・ボルドー、カナダ・ケベックに続き、日本、それも「京都議定書※」が採択された京都に「WOODRISE」を招致した思いもそこにありました。 ※京都議定書とは、1997年に国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)において採択された議定書のこと。先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標などを定めた。
JIBHは世界に向けて提議していく
今後、JIBHの存在意義はより高まっていくと思います。今、世界では住宅不足の国が少なくありません。生活水準が低い国では、安価なソーシャルハウスのニーズが高まっており、短期間で良質な住宅を造ることができる日本の建築技術は必ず活かされます。そのような国々と日本の交流を促進することもJIBHの役割です。
そして、時代は変化しています。木は加工し利用していくことで、人々にその価値を提供してきました。今では、温室効果ガス吸収源対策として、森林の循環の必要性から再造林の価値が改めて認識されています。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、建築物におけるCO2排出量を見える化する仕組みも必要になってきています。省エネ性能の高い住宅の普及により、居住時のCO2排出削減は取組みが進んでいますが、それに加えて、原材料調達や輸送・加工・建築の過程で排出されるCO2削減も課題となっています。
さらに近年では、資材価格の高騰にともない、安定的な木材確保という課題も生じていますが、世界規模で情報交換をしながら、サプライチェーンを安定させていくための知恵を絞る必要があります。
これからもJIBHは、建築・住宅の分野において、時代の変化と共に起こるさまざまな課題に対して諸外国と情報共有を図り、「WOODRISE」のような機会を活かして、建築・住宅業界の発展に寄与していきたいと考えています。
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