国際建築住宅産業協会 SPECIAL INTERVIEW 会長が語るJIBHの志

国際建築住宅産業協会 会長 矢野 龍 RYU Yano
10年先を見据え、世界に貢献する

会長イメージ
2020年11月30日 取材

JIBHの意義
建築・住宅の分野で、日本は世界にどのように貢献できるのか。それが、一般社団法人としてJIBH(国際建築住宅産業協会)が存在する意義だと思います。
設立以来のこの2年間、いろいろな活動をしてきました。ミャンマーとはお互いに訪問し合い、セミナーを開催しました。以前から取り組んできたミャンマーパイロットプロジェクトでは、低中所得者向けのモデルアパートを建設し、竣工後はショールームとして活用しています。日本の建築技術や住宅部材も紹介しています。
オーストラリアとは情報提供や技術協力を行うことで相互の発展と結束を目的としたMOUを締結しました。相互交流や3つのワーキンググループを立ち上げるなど積極的に活動しています。また、国際住宅協会のメンバーとして、北米・南米、ヨーロッパ諸国、アジア、アフリカ諸国と、住宅産業の課題にどのように対応するかをテーマに取り組んでいます。JIBHと世界とのつながりはますます広がっています。
相手国を理解すること
外国の住環境の整備をサポートするなら、日本で培ってきた建築技術や設計手法、高品質・高機能な住宅設備が相手の国に適しているかを意識すべきです。フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシアで暮らす人たちにとって、気候を考えれば、高断熱、高気密の住宅は必要ありません。その国ならではの生活、宗教、文化などを理解した上での住宅づくりはとても大切です。
その国の所得水準に合わせることも大事です。特にアジア圏においては、貧富の差がまだ広く存在しているので、低所得者向け住宅へのニーズが高いのです。そこでは「高性能」よりは「買いやすさ」という観点を優先すべきでしょう。
また、国によっては、建築の法律等が十分整っていなかったり、住宅ローンが広く浸透していないケースもあります。これから住環境整備に携わるなら、法律や金融など、私たちは広い視野を持つことも必要になります。
一元化したサポート
建築はゼネコン、住宅関係はハウスメーカー、住宅設備は建材メーカー、そして、法整備は国土交通省というように、建築・住宅業界はもちろん、行政とも一元化した総合的なサポートは、JIBHならではの貢献のかたちです。これまでに実施した海外でのセミナーには、その国の建築・住宅分野の企業だけではなく、業界団体や政府関係者なども出席しています。国や業種を超えた人的交流が盛んになっています。
「WOODRISE※」を2021年に誘致することは、一元的に取り組んできた成果の一つです。これは、中高層木造建築物の普及と発展を目的とした国際会議なのですが、「WOODRISE 2021 KYOTO」としてJIBHが主催します。海外との新しいつながりをつくったり、今ある関係性をさらに深める事ができる画期的なイベントになるはずです。 ※Woodriseとは、中高層木造建築物の発展のため、業界関係者が一堂に結集するイベントです。第1回2017年ボルドー(フランス)、第2回2019年ケベックシティ(カナダ)にて開催されました。

→WOODRISE 2021 KYOTO

海外との懸け橋に
この10年間、世界規模でグローバル化が急速に進みました。海外に活路を見出す日本の企業も増えていますが、1社だけでできることには限界があります。
海外進出には、情報・つながり(人脈)が重要ですが、建築・住宅業界が結束することで、海外の情報を幅広くつかみ、共有できます。そのように日本企業と海外との懸け橋になる事はJIBHの重要な役割です。
今はミャンマー、オーストラリアとMOUを締結していますが、これからも、会員企業が望む国や地域を聴き取り、日本の建築・住宅業界全体が諸外国で最大の効果を発揮できるように、JIBHがサポートしていきます。
こだわりたいのは、こちらの技術や商品を売り込むのではなく、私たちの力を結集してその国のために何ができるのかを考えていく、その姿勢です。豊かな住環境を提供するだけではなく、建築技術を伝え、その国に定着させることも視野に入れています。建築・住宅業界の発展が雇用創出につながり、現地の人々の生活水準を押し上げていく。まさにその国の発展の一助となるようJIBHとして取り組んでいきたいと思います。
建築・住宅業界としての貢献
また、建築技術は様々な分野への応用が可能です。例えば、農作物を効果的に作り出す工場の建設に携わることが、飢餓や環境問題の改善に役立ちます。JIBHは、非住宅分野にまで、建築技術を広める事で新しい価値を生み出し、より豊かな生活の実現に貢献していきます。
このような取り組みが世界を変えるまでには時間がかかるでしょう。企業にとっても収益にはすぐには結びつかないかもしれません。しかし、5年、10年という先を見据えることを大事にしたいのです。建築・住宅事業を通して、地域に、社会に、国に、世界に貢献すること。そのような「高邁な志」を、JIBHはいつまでも持ち続けます。
より強い結束を
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行は、建築・住宅業界に大きな影響をもたらしています。各国との交流に大きな制限が加わり、JIBHの会員各社においても海外展開を進めるには厳しい状況が続くでしょう。このような問題に取り組むには、より一層、業界が一体となる事が大切です。JIBHとしては、WEB会議を取り入れるなど、どんな状況でも国内外で意思疎通を行えるよう取り組んでいます。より多くの皆様に会員になっていただき、官民の連携により、社会に貢献できる強い基盤を作ると共に、業界全体をより大きな規模で盛り上げていきます。
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